片方の目で見るべきもの
左目で見るべきもの
右目で見るべきもの
片方の耳で聞かなければならないもの
右耳で聞かなければならないもの
左耳で聞かなければならないもの
(轟音)のなかに置くべきもの─跳ね返り
─(左か右の)片方だけの目で見るべきものの一系列全体を基礎づけられるかもしれない片方だけの耳で聞く(聴く)べきものの一系列を見出せるかもしれない
黒い艶消し紙を裏に貼った曇りガラス(銀の効果)を使うこと
(眼鏡屋で)
「結び」(紡い結び、その他)についての本を買うこと。
移動できる鏡張りの部屋を手に入れること-そして鏡の効果を写真に撮ること......
写真は、壁(朝)
浴室の鏡に映った私の姿
傾斜面の上の鉛の針金のローラー三木(一種のレース)
同じようなもの(額縁の釘)(スポンジ、一〇番街)の山積み/堆積
槌で打って型をつくられた鉛あるいは詰め物をされた鉛は密度がより低い。
図3 ポンプの吸引
練り歯磨きを使うこと
ガラス上で試すこと
同じくブリアンティーヌ[毛髪に光沢をつける香油]、コール
ド・クリーム、等々?
固形でないもの
石鹸水+濃いお茶=黄褐色に、淡緑色に調合すべきもの
銀河
あるいは[チョコレート](粉砕機)の脚のようにルイ十五世調のイメージ
雲はむしろ(ひげそり用)石鹸である。
忘れてはならないもの、デュムシェルのタブローつまり(薬局)=雪、夕暮れの色の濃い空、水平線の二つの光(バラ色と線色) の効果
造形的持続について討議するよう努めること
「銀河」の形態を得るのにデュシャンは歯磨きクリーム化プリアンティンかコールドクリームかひげそり用の石鹸のようなものを2枚のガラスの間に挟んで、左右に動かして、あの「銀河」の形態をえたのではないだろうか。
「銀河あるいは磨砕器の脚のようなルイ15世のイメージ。雲はむしろ”ヒゲ剃り用”石鹸である」(『不定法』にて
もっと考えれば、この試みを小さいガラス板の上で行い、これを写真的な処理に拡大して、その輪郭だけを「大ガラス」に転写したのではなかろうか
「動くこの書き込みを彫刻的に表示すること、そして瞬間写真を撮ること。最終の次元に引き延ばすこと。」 (東野)
ヒトの視覚の特殊性というのは、横に並んだ二つの目が、それぞれ違った映像を感じて、それが脳ミソでかきまぜられて、立体を感じるようになっていることなのだった。
一方、カメラというのは、もともとが片目で見た映像なのである。ファインダーをのぞいていないほうの目を、カメラマンがあけたままであっても、写ってきた 写真は片目の映像には違いない。これを両目で見れば、「写真は立体を平面に置き換えたものである」という正論が見えてしまうばかりである。だから、写真 を、実物からうける視覚の印象と同じように見ようとするなら、片目で見なければいけないのである。
南伸坊「モンガイカンの美術館」